閏札/URUUFUDA

2023/03/26 11:02


現在のトランプは明治時代の文明開化と共に輸入され、普及していったものですが、実は戦国時代にはトランプの原型とも言えるカルタが日本に入ってきていました。その後に、カルタが禁止されることで現在の花札などに進化し、現在に至ったとされています。

そんな日本のトランプの歴史について、紹介していきます。

南蛮船からのカルタの伝来


日本ではまだ戦国の世であった16世紀に、ポルトガルからトランプと似たカルタが伝来しました。ポルトガル語のカードを意味するcarta(カルタ) がそのまま伝わり、日本でも「カルタ」の名称で広まったと言われています。当時のカルタは、48枚の札で構成されていました。(写真は、天正カルタをベースにした復元天正トランプ)

そのカルタが普及し、福岡県の大牟田で和紙を素材に国産化され、当時の元号の天正から「天正カルタ」と呼ばれます。それもあって、大牟田はかるた発祥の地ととされ、カルタについて古代〜近代までの様々な歴史資料が展示されている三池カルタ・歴史資料館があります。

天正カルタは、当時の史料にも登場していたことからかなり普及していたと思われ、大河ドラマ真田丸でも大阪城内の描写の中で天正カルタと思われるカードが登場しています。

天正カルタの派生から禁止へ



天正カルタの広がりによって、枚数を増やし、絵柄も東洋風にアレンジされたうんすんカルタなど独自に進化を遂げたカルタも登場していきます。

しかし、江戸時代に社会的に賭博が問題視され、幕府でもカルタの賭け事を禁止しました。そのため、天正カルタは禁制の対象となり、姿を消していきます。うんすんカルタは、熊本県の人吉の地域で継承され、昭和以降も県の重要無形民俗文化財に指定されるなど、文化的な遺産として保存する試みが続けられています。

そんな幕府の目を逃れるために、花札が考案されたと考えられています。
花札については、カルタと同じ48枚の構成ですが、カルタがスート4種×12枚だったのに対して、花札は12ヶ月×4枚にするなどカルタをカモフラージュしているのが伺えます。(花札もその後に禁止されます。)

ちなみに、カルタと言えば、他にも百人一首などの歌詠みかるたがありますが、公家などの遊びであった貝あわせという遊びベースとなっていて、そこにカードとしての形を取り入れたのが、現在のものとなっています。そのため、天正カルタや花札などとは異なる系統のカルタになります。

現在のトランプへ


現在、広く普及しているトランプは、明治時代にアメリカやイギリスから入ってきた英米式と言われるトランプです。トランプが輸入されることに伴って、花札も解禁されます。

トランプの名称で呼ぶのは日本だけで、切り札を意味するトランプというプレイが誤認されて、カード自体の名称として呼ばれるようになったと言われています。

トランプは、海外ではプレイングカード(Playing Card)の名称で呼ばれています。

日本で最初のトランプの製造は、1902年(明治35年)に任天堂によって行われたことが、任天堂のHPで紹介されています。
https://www.nintendo.co.jp/corporate/history/index.html

その後、プラスチック素材の物が登場するなど、現在に至ります。

素朴なトランプへの疑問から

上記のような歴史的な背景によって、現在のトランプは明治期に入ってきた英米式のトランプのトレースしたものがほとんどです。

デザインが和の要素を使っていても、スートは♤、◇、♧、♡で固定されています。トランプ=♤、◇、♧、♡というイメージが一般的であり、常識ともなっているので致し方ないと思いつつも、そのことに疑問や違和感を感じました。

もし、江戸時代にカルタが規制されておらず、広く社会に浸透した状態で明治を迎えていたら、今のトランプがそのままの形で普及したのではなく、日本のカルタや文化と融合していく形で現在とは違う独自の進化の遂げたものもあったのではないか?

花札の場合はカルタの禁止によって、カルタではないことをカモフラージュするためにスートをなくすなどのカードの形式を変える必要性があったものの、そうでなければカルタの形式を変える必要性はなくなり、より自分たちの文化に近いものに進化したのではないか?

そう思ったことが、和のトランプ 閏札/URUUFUDAを作ることに繋がっていきます。