閏札/URUUFUDA

2022/11/16 16:16

vol.3 紙について知らないことに気づき、紙の勉強をする(和紙を素材に選ぶ前日談)

https://uruufuda.theshop.jp/blog/2022/05/20/120852

で素材を考えているのと並行して、デザインを動かしはじめました。


閏札のデザインは、グラフィックデザイナーの福澤卓馬さん(playtag)にお願いしました。


福澤さんとは、前職でやっていたブランドで約4年ほど一緒に仕事をしていた間柄です。

僕にとってアイデアを素敵なデザインに昇華してくれる魔法使いのような存在であると同時に、幸運なことに最も身近なデザイナーでもあります。


コンセプトワークの回で書いたように、閏札の構造を伝えた上で、四季の和歌をテーマにデザインとして、

重視してお願いしたポイントは、


◯華美(平安の王朝文化に由来する様な)というよりはシンプルに。

 全体の見立ては、現代のグラフィックデザインで要素に和を盛り込むイメージ。


というもの。


この意図としては、当時の物を再現するのではなく、あくまで現代の物であるため、デザインとしては

シンプルにしたいということ。

もう一つは、和歌をテーマしているため。少ない文字で表現をしている和歌のように、個々の解釈が出来るような

余白を作りたかったためです。


他にも最低限の条件はあるものの、普通のデザインのオリエンで考えるとかなりアバウトではありますが、

デザインのオリエンはこんなニュアンスで行いました。


1回目はイメージよりかなり飛んだデザインだったので修正してもらいましたが、2回目の提案で絵札が歌人のシルエットに

なっている現在のデザインの原型のようなデザインが出てきて、自分の中でもすごく良いと感じたのでこの方向性で進むことにしました。


ただ、この時はデザインとしては目を引いて良いのですが、少し強い印象があったので、もう少し圧を落として柔らかくしたいという

オーダーを出しました。感覚的な話ですが、少し武士の様な印象があったので、公家のようなイメージにしたいという感じですね。


デザインについては、かなりすんなりといった印象ですが、悩ましかった点が2つありました。

①桜のマークの色をどうするか?

②絵札の識別性をどうやってもたせるか?



桜のマークの色


①の桜の色については、色としてピンクが入ることで全体の世界観が崩れるのではないかという懸念でした。

最初は白など他の色の含めて検討しましたが、全体のバランスやわかり易さという観点から、全体のイメージを

崩さない色合いを探る方向にし、現在の落ち着いた色のピンクになりました。




②については、数札はマークの数があるので分かるものの、絵札の場合シルエットだけだとジャックとキングの

識別がしにくいという点です。


これは、カードの左上のマークのしたに線を引く1〜3本引くことでデザインや世界観を崩さずに、カードの識別性を

持たせるようにしました。





他に細かいポイントについては絵札を中心に、


◯Aだけ独自のデザイン

◯歌人の顔の向き

◯歌人によっては、ワンポイントのデザインを入れて意味を持たせる


などちょっとした部分ではかなりこだわってますが、デザインはこのような形でわりとすんなりと収束していきます。




デザインは細かい調整はありつつも比較的順調でしたが、和紙でトランプを作るまでは非常に多くのハードルがありました。


Vol.3 紙について知らないことに気づき、紙の勉強をする(和紙を素材に選ぶ前日談)

 https://uruufuda.theshop.jp/blog/2022/05/20/120852

で和紙でトランプを作ってみたいと思い、その方向で動くことにしました。


和紙の加工・印刷でつまづく


まず、ネットでトランプOEM受注している企業に問い合わせをして、意向をぶつけてみました。

反応としては、どこも和紙は難しい、無理という回答でした。


ただ、こちらとしてはそれまでにコンセプトでも時間やエネルギーをかけていたので、出来るところまで突き詰めていきたいと思っていて、やってみないと分からないと思ったので、こちらの話をちゃんと聞いてくれた一社に頼み込んで本番仕様でテスト製造をしました。


実際に作った試作品の印象としては、


良かった点は、現在の閏札の特徴と同じで、

◯和紙の手触りや質感が感じられる

◯デザインとの相性が良い

というもので、触ったときの和紙の質感が明らかに従来のカードと異質な感じがとても良いと感じました。


問題点としては

◯印刷が霞んだりしてキレイに出ない

◯紙のカットがずれる

というような感じだったため、明らかにこのままでは無理という結果でした。


改善点は分かったもののこれ以上のカスタム的な個別対応は難しいとのことだったので、一から上記の課題を解決して作る方法、受けてくれる印刷会社、加工会社さんを探すことになりました。


僕としてはここまでやってきたので、当初決めていた予算をオーバーしても、それがさらに長期間になっても良いので、納得するところまでやりきることにしました。


和紙の印刷・加工の出来るところを探す


ある意味で、スタートラインに戻ったわけですが、一度、本番仕様で制作したことで、印刷と紙の加工という2つの課題が明確になったので、その課題を一つのところで解決しようとせず、それぞれで解決すれば技術的には作ることができるのではないだろうかだと思っていました。


というのも、和紙に印刷をされているものは実際に存在するわけで、和紙の加工も名刺用のカード型の和紙のようにキレイに断裁されている物が世の中には実際にあるからです。


和紙を作っている会社に問い合わせて、上記の課題に対する細かい技術的なレクチャーも受けて、どうするべきか?が見えてきたので、それを受けてくれるところを探すことにしました。


印刷については、デザイナーの福澤さんがショウエイさんを紹介してくれることになり、ひとまずはOKで、加工の方を自分で調べて当たることにしました。しかし、問い合わせたすべてのところから断られる、あるいは返答がありませんでした。


どうしよう?と思っていたときに、ショウエイさんと最初の打ち合わせをしたのですが、加工を含めてショウエイさんが受けてくれることになりました。その後に、相当ショウエイさんが大変だったようですが、制作できる体制を作ってくれて、そこから試作の日々が始まります。

(そこまで、粘り強くやっていただいたショウエイさんには、本当に感謝してます。)


試作を繰り返す

ようやく試作にチャレンジできるようになり、課題に対して取り組みはじめます。上記の技術的な課題はクリアできたのですが、もう一段階クリアしなければ課題がありました。

それが、和紙ゆえに光に当てると、透けてしまうという課題でした。
この課題を解決するために、裏側に施している印刷を厚めのシルク印刷でチャレンジすることにしました。

その次の試作で、透けの課題はクリアできる目処が経ちましたが、その代わりに印刷のズレなどが再び発生し、キレイに印刷するための調整、改善が必要になりました。その課題をクリアするために、そこから2度の試作によって、ようやく満足出来る水準に仕上げることができました。
最初も含めると、本番仕様での試作(校正)を5回、期間にして1年近くの時間を和紙の印刷・加工に費やしたため、気づけば和のトランプを作ろうと思ってから、2年半もの時間が経っていました。

コンセプトからアウトプットまで妥協せずに一気通貫した美しいモノを作りたかったという想いは、閏札という形で成就しました。

これからがスタートですが、手に持ってくれた人の時間が豊かになるように価値を伝えながら、協力してくれた人や応援してくれた人が携わって良かったと思ってもらえるように活動していきたいと思います。

こんな拙い長文を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。