閏札/URUUFUDA

2022/11/16 16:15


紙について知る

素材をどうするかというのを考えていたことについて今回は書いていきます。

フラットに和のコンセプト、デザインということを考えると、プラスチックのような質感やテカテカした感じよりも、もう少し手触りやデザインが馴染む方向性に出来ないか?ということが、素材を考える上での一歩目でした。当然、現在のトランプは機能や遊びやすさを追求して現在の形に最適化されているわけなのですが、もう少し違うコンセプトとのバランスが取れないのかな?ということを考えていました。

そこで、和紙やファンシーな紙で出来ないかという方向で考えはじめました。
ただ、ここで一つ気になることがありました。そういえば、僕は、和紙について全然知らないな〜と・・・。

この瞬間、和歌を読んだ時のデジャブのような危うい兆候を感じます。
これは、また新しい沼なのかもしれない。

しかし、気になってしまった以上、自分にウソを付くわけにはいかず、ちゃんと納得した上で紙も選ぼうということで、コンセプトワークと同じように、紙の歴史や種類について勉強することにしました。
(コンセプトワークについての記事はこちら。https://uruufuda.theshop.jp/blog/2022/04/12/193129)

さすがに、自分でもたいがいだな〜も思いつつ、和歌の件で自分の中で完全にタガが外れたため、この頃からとにかくコンセプチュアルで純度の高いものを作ろうという思いが強くなっていて、極めて非合理的ですがとにかく気になることは突き詰めて、突き抜けていこうと思いが強くなっていきます。(僕自身は、本来かなり合理的な人間なのですが。。。)


紙については、まずトランプの歴史を勉強するときと同様に全体像をざっくり把握するために、東京都北区王子の飛鳥山公園にある紙の博物館に行きました。王子製紙は、創業地が王子であることが名前の由来です。
紙の博物館は、どちらかと言うと洋紙の製紙技術が中心ですが、展示コーナーに古代のパピルスや木簡のレプリカがあったり、紙の歴史の大まかな流れが物のビジュアルと一緒にしることができるので、非常に分かりやすくて良かったです。

そこから、紙の歴史について書かれた超分厚い本を何冊か読んで、歴史、紙の性質などについて知ります。

紙以前は、木簡が紙の役割を果たしており、その後に中国起源で紙が生まれ、記録媒体としての支配的な地位となっていきます。
それが中央アジア、アラブ経由での欧州、あるいは中国から日本という流れで普及していきます。ヨーロッパは、紙が普及するまでは羊皮紙が紙の役割を果たしていましたが、非常に高価な物でした。

実はルターの宗教改革が、印刷技術の発達による書物の一般への普及による啓蒙効果が関係しているなど、現在はペーパーレスが叫ばれていますが当時は最新のテクノロジーとして時代の変革に大きく関わっていたというような側面で見ても、非常に興味深い内容でした。

和紙については和紙の本を読んだり、和紙のお店に行って様々な和紙の実物を見たり、買ったりして、知識と感覚を摺り合わせていきました。和紙については、記録としてだけでなく、衣服としても使われていたという背景など、人と紙の関係性の時代変遷は非常におもしろいですね。

そんなこんなで、大体2ヶ月ほどかけて紙について調べてみましたが、結果として最初と変わらず、とりあえず和紙でやってみたいという結論になりました。和紙と洋紙では系統が違うため、コンセプト的に考えるとやはり和紙の系統から表現するのが、意味性としても重要なのだろうと。最初の認識と結論だけを抜き取ると、徒労のようなプロセスではありましたが、紙という存在のおもしろさやテクノロジーによる主役の交代の歴史など非常に興味深いインプットとなりました。

現在は、一般の記録媒体としての役割は電子化によって縮小していますが、文化やリアルに存在している物質という観点から、紙に深くフォーカスしたものづくりをするのもおもしろいかもしれないなと思っています。

紙の勉強で読んだ本


紙と人との歴史 世界を動かしたメディアの物語(上)

中国から広がっていく紙の歴史について、詳細に記述されている一冊。本のボリュームはありますが、紙の歴史が非常に分かりやすくなるので、先ほどの紙の博物館や図鑑レベルでざっくりとした全体像を把握した後に読むのがオススメです。
著者の方の詳細な取材・記述が読んでていて、ものづくりの視点で素晴らしいなと思える一冊です。

紙の日本史(下)

上が紙の世界史であれば、こちらは紙の日本史といえる一冊。民俗学的な視点から、時代ごとに紙の歴史や当時の人々との関わりが解説されていて、和紙の変遷を理解するのにオススメです。この本に書かれている内容を頭に入れた状態で各地の和紙を見ていくと、おもしろいと思います。