閏札/URUUFUDA

2022/11/16 16:14


たまたま、旅先で見たトランプがきっかけ

僕がこの閏札(うるうふだ)を作ろうと思ったきっかけは旅先で土産物のトランプを見たときに、なんでトランプは♤◇♧♡ばっかなのだろうと疑問に思ったことでした。

トランプである以上、マークが♤◇♧♡なのは致し方ない気もするけど、和的なものがテーマだと、2つの要素が分離しているように見えて、一つのコンセプトに昇華されていないことに違和感を感じました。

そんなところから、僕自身は別にトランプに関心のある人間ではなかったのですが、
・そもそも、トランプっていつ出来たのか?
・トランプに定義とか決まりがあるのか?
・いつ、日本に入ってきて広まったのか?
といったことがちょっと気になり、当時は前職の会社を退職して、充電中で時間に余裕があったので、ネットや本でトランプの歴史を調べ始めました。

トランプの歴史や定義を調べる


出典:三池カルタ・歴史資料館より

 トランプについて調べてみると、一般的なトランプは明治期に日本に入ってきた英米式と言われる物で、それが"トランプ"と呼ばれ、広く普及したということでした。そのため、♤◇♧♡の4種のスート(マーク)=トランプであると認識されていますが、ヨーロッパの各国では必ずしもこの4種ではありません。

 さらに日本との関わりを調べていくと、戦国時代の天正期に鉄砲やキリスト教と一緒にトランプの原型とも言える"カルタ"が、実は日本に入ってきていました。そのカルタが、国産化されて”天正カルタ”と呼ばれて普及したのですが、江戸時代に賭博が禁止され、天正カルタもその対象となりました。そのため、幕府の目を逃れるために形を変えて、歌詠みカルタや花札になったり、一部の地方でひっそりと受け継がれるローカル札と呼ばれるようなモノになっていきました。そして、明治に今のトランプが入ってきて、文明開化や戦後復興に伴う急激な西洋化とともに一般に普及し、現在に至っています。

 そんな一連のことを知ったとき、決まりがあるわけではないし、そもそも原型が早くから日本に入ってきていたのなら、違う形のトランプが日本で浸透していた可能性もあったのではないか?歴史にifはないけれども、もっと違うトランプがあっても良いのでは?

と思うようになり、とはいえまだ頭の中でのイメージの話だったので、感覚を掴みたいのと調べたことの裏取りを含めて、天正カルタが最初に作られたと言われる福岡県・大牟田にある三池カルタ・歴史資料館に行ってみることにしました。

天正カルタ発祥の地:福岡県 大牟田に飛ぶ



とりあえず自分の目で見て、感じてみるのが大事ということで福岡・大牟田へ。

三池カルタ・歴史資料館は、世界や日本のカルタの歴史や様々なカルタが展示されており、実際に行ってみて、インドのカードはヒンドゥー教の神をモチーフにしているものなどもあり、ヨーロッパ以外でも国ごとでそれぞれ独自の物があるのだということが分かりました。

他にも、当時のポルトガル人がカルタをしている様子を再現した模型など、実寸に近いサイズ感で見ることでイメージ出来ることもあるので、やはり行って良かったなと思いました。


また、デザイナー用に書籍と天正カルタのトランプを資料として購入しつつ、以前に天正カルタを当時の姿で復刻させるというプロジェクトに携わった方に軽くお話を聞くことが出来、素材に何を使っていたのかだったり、質感などのニュアンスも聞くことが出来ました。八女の和紙で、素材を楮を使っていたということを聞き、おそらくこのときに聞いたことが和紙にこだわる一つのポイントとなったのだと思います。

結果として、カルタやトランプにおける定義や条件といった戒律的なものはあまりなく、思っていたよりも自由にやっても良いのかなという印象を持ちました。

そして、あらためて、スートを含めた全ての要素が一つの和のコンセプト・世界観で表現されているものがあっても良いんじゃないかな〜という結論に至ります。

ただ、そんな自分の疑問に対する答えになる物が自分が調べた範囲では世の中になかったので、じゃ自分で作るしかないかな〜ということで閏札のコンセプトを考え始めました。(この時点では、良いものを作ろうとは思っていましたが、今よりもだいぶ軽く考えていて、まさかこの後に2年半もかかるとは思っていませんでしたが。)


トランプ・カルタの歴史に少し興味のある方へ


カルタ―PLAYING CARD (ぶんけいの伝承遊びシリーズ) :写真上
上述した三池カルタ・歴史資料館が監修しているカルタの歴史について、網羅的に紹介している1冊。
写真が多くて読みやすいので、最初のとっかかりに図鑑感覚で読めて、とてもおすすめです。

トランプものがたり:写真下
トランプの歴史について、詳しく紹介している1冊。
トランプの要素の由来など、かなり詳細に書かれているんで、ネットにないような深い部分を知りたい方はこちらがオススメ。

どちらも図書館でも借りられますし、Amazonでも取り扱っているので、良かったらご参考まで。